第3章「ルンタッタの草原」
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草原のおきて
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ちっともの森を後にした僕らは、島の西側に広がる草原地帯を目指した。
その日はとても天気が良くて、気持ち良い風が吹いていた。
ルーナは時々、歩きながら踊った。彼女は風と遊ぶように踊った。
指先でつかまえた風を、肩までのぼらせて
頭のてっぺんから空にかえすような、そんな不思議な踊りだった。
気がつくと、僕も彼女の踊りにつられて、軽くステップを踏んで歩いていた。
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草原地帯につくと、一匹の風変わりな犬がかけよってきた。
そして、僕らの周りを一周すると、こう言ったんだ。
「あなたを待ってたよ、ルーナ。それから、君の相方は、えーっと、ソルだね。」
僕とルーナは思わず目を合わせて驚いた。
「君はなんで僕らの名前を知ってるんだい? 」
思わず僕が尋ねると、風変わりな犬はすぐに答えてきた。
「風が運んできて、教えてくれたのさ。今日は君たちが歩いてきた森の方角から、良い風が吹いてるからね。 」
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風変わりな犬はかぶっていた、だいぶ年季が入った(でも、しっかりとした生地で仕立ててある)ハットをとって、まるで舞台の役者がするようなポーズで挨拶してくれた。
「レディース アンド ジェントルメン。今日ここでお会いできて光栄だよ。だって、こんなにいい天気の日に、君と君と僕は、はじめて出会えたんだ。これって、すごいことじゃない?」
「僕はルンタッタ。この草原の番人だよ。太陽が登って、夜が眠りを連れてくるまでの間、草原を守るのが僕の仕事さ。この草原にはひとつだけ掟があるんだ。」
「それはね、受け取るってこと。遠慮せずにね。それがここの掟。 」
彼はそう言うと、一本の花をルーナに差し出した。
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「うれしいわ。ありがとう。」
ルーナがそう言って、丁寧に花を受け取ると、彼はこう続けた。
「降り注ぐ太陽の光も、気持ち良く吹き抜ける風も草原の緑も、みんな受け取っていいんだよ。遠慮せずにね。
レディース アンド ジェントルマン、君達のために今日の草原は貸切だよ、一緒に遊ぼう。 」
僕らはそれから、ルンタッタと遊んだんだ。
お気に入りの葉っぱを見つけたり、流れていく雲の形を動物に見たてて当てっこしたり、草原に寝転んで、ゴロゴロ転がったり。
それだけで、なんだかおかしなくらいお腹をかかえて笑えたのは、もしかしたら底抜けに気持ちいい、この日の天気のせいだったのかもしれない。
僕らはまるで子供に戻ったみたいに、笑い転げて、時間を忘れて楽しんだんだ。
僕らは遊び疲れて、草原に大の字になって、寝転がって眠った。
草原はまるでフカフカのベッドみたいだった。
柔らかな風が、ゆりかごを揺らすみたいに、僕らの髪をなでていった。
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僕らは昼寝から目覚めると、草原を後にした。
ここでも、虹色の鳥の手がかりは見つからなかったけど、草原の心地よい風に吹かれて、少し変わった不思議な紳士と遊んだことを、僕らはきっと忘れないだろう。
ルンタッタは、別れ際にクッキーを一箱取り出してきて、こういった。
「島の北西にビーチがあるんだけど、そこに友だちがいるんだ。もしよかったら、このクッキーを届けてくれないかい?きっと今日は天気がいいから、彼は海を眺めていると思うんだ。 」
僕らは手渡されたクッキーを届けるために、そのビーチを探して歩くことにしたんだ。
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