Page6

ちいさな鳥

波の音が気持ちよくて

気がつくと私は目を閉じていた。

するとマーレが、私の胸にすっと手を当てた。

とても自然な動作だったから

何をされたのか最初はわからなかった。

彼女の体温が、手のひらから伝わってきた。

次の瞬間、マーレは私の胸の中から

ちいさな鳥をするっと取り出して、空に放った。

「空に帰してあげる必要があるのよ。

前に進むためにはね。

あれはあなたが叶えられなかった未来や、想い」

小さな鳥は美しい羽を広げると

空高く飛び去っていった。

不思議と怖くはなかった。

error: Content is protected !!