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満月の夜

やがて太陽は沈み

あっという間に夜が来て

私は帰りの船を乗り過ごしてしまった。

マーレは島の小さな食堂で

夕食をご馳走してくれた。

その夜は満月だった。

二人で浜に降りて

夜の海に小さなボートを出した。

月が照らす海の上で

マーレにお礼を言うと彼女は笑って、こう言った。

「タダじゃないのよ。

代わりにあなたの一番大事なものをちょうだい」

ふっと思った。

私にとって「一番大切なもの」って何だろう?って。

忙しい生活の中で

そんな事を考えることすら忘れていたから。

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